2025/09/22
“痩せる情報”はなぜ断定されるのか & 科学的に“絶対”ではない理由
SNSやYouTubeなどで、「この方法で100%痩せる」「〇〇をすれば必ず腹筋が割れる」などの言い切りをよく見かけます。しかし、科学的には「すべての人に当てはまる“絶対法則”」というものはほぼ存在しません。以下で、その理由を研究データとともに整理します。
1. 経験則・発信構造が“断定”を生む理由
個人の成功体験が一般化されやすい
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アスリートやボディービルダーは、自身で成功した方法(例えば極端な食事制限、炭水化物制限、多量の有酸素運動など)を語り、それが「私にはこうだった→だから万人にもこうなるはずだ」と受け取られやすい。
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しかし、その人の遺伝的な体質・成長の歴史・筋肉/脂肪比率・ホルモン状況・生活習慣などが背景にあり、それを無視してしまえば誤った一般化になる。
SNSのアルゴリズム・商業インセンティブ
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キャッチーな断定文の方が「いいね」「シェア」「保存」が取れやすい → 拡散が早い。
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情報発信者にはフォロワー獲得や製品/プログラムの販売などの商業的利益が絡むことも多く、それが言い切り表現を後押しする。(LINE登録で○○など)
認知バイアスが働く
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権威バイアス(有名人・専門家が言っているから正しいと思う)
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確認バイアス(自分が信じたいことを裏付ける情報を選びたくなる)
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単純化バイアス(複雑なものをなるべく単純に受け取ろうとする)
これらで、受け手も断定的情報を信じやすくなる。
○○大会で1位などの有名選手の情報発信は、投稿者にとってそういった意図がなくとも、誤った一般化となることがある。「名プレイヤー」が「名コーチ」になるわけではないことを前提に考える必要がある。
2. 科学的に“絶対”ではない理由:個体差の証拠
以下、複数の研究から、「同じ介入(食事制限・運動・食物種類など)でも個人ごとに反応が大きく異なる」ことを示すデータを紹介します。
個体差が明確に観察された研究例
2.1 運動介入後の体重変化のばらつき
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「運動を取り入れた介入後の体重変化の個人差」を定量的に評価。
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結果、「運動による体重変化の真の個人差の標準偏差」は約 0.8 kg(95%信頼区間で −0.9 ~ +1.4 kg)とされた。つまり、「運動をしても人によって2〜3 kgくらい増減差が出る可能性はあるが、“必ず大きく減る”というほどの差は確認されていない」ということ。
2.2 食事への応答差(炭水化物・血糖反応など)
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最近の研究では、同じ種類の炭水化物をとっても人によって食後血糖応答が異なることが示されており、これはインスリン感受性やβ細胞機能などの“内的な生理状態”が関与していることがわかっています。
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また、「食品をとった後の満腹感・空腹感」が、個人間で安定して異なるという研究もあります。
2.3 高脂肪食/食環境が肥満に与える影響の個体差
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高脂肪食環境で太る人と太らない人が存在し、その違いは「食後の満腹反応」「食の誘惑に対する感受性」「食行動のコントロールのしやすさ」などが関係している、という研究があります。
2.4 運動量や有酸素運動の効果:量‐反応関係だが差あり
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「有酸素運動を週に150分以上(中強度以上)行うと、体重・ウエスト囲・体脂肪量が臨床的に意義ある改善を示す」という結果があります。
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“量を増やせば増やすほど効果が直線的に大きくなる”というものの、効果の大きさ(どれだけ減るか)は個人差が大きく、体重減少の変動も大きいことが指摘されています。
3. 科学的に「確立されていること」「不確かなこと」
有酸素運動の“量‐反応関係”
✅ほぼ確立しているもの
- 150分/週以上の中〜高強度有酸素運動で、肥満・過体重者において体脂肪やウエスト囲の減少が期待できる。
⚠️「不確か」または「個体差が大きい」こと
- 運動だけで“劇的な減量”になるか。
- 運動+食事のバランスによる差。
食事全体のカロリー制限・バランス
✅ほぼ確立しているもの
- 「カロリー収支」摂取と消費の差が体重変化の基盤。
⚠️「不確か」または「個体差が大きい」こと
- どの栄養素(たんぱく質/炭水化物/脂質)の比率が最適か、個人によって異なる。
- また食事の種類・タイミングの影響も人による。
満腹感・空腹感・食欲コントロール
✅ほぼ確立しているもの
- 食物性繊維・たんぱく質を増やす・血糖コントロールが満腹感の改善には有効
⚠️「不確か」または「個体差が大きい」こと
- どの食べ物がどれだけ満腹感を持続させるか、多くは個人差あり。ホルモン応答の反応速度や強さも異なる。
運動強度・頻度
✅ほぼ確立しているもの
- 強度を上げたり、運動の継続時間を増やしたりすることで、消費エネルギーは増える。
⚠️「不確か」または「個体差が大きい」こと
- 回復能力・怪我リスク・モチベーション・生活時間の制約などで「どこまでできるか」に個人差あり。
4. 何が“絶対ではない”か:具体例
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「炭水化物を食べなければ痩せる」
→ 炭水化物制限は多くの場合体重減少をもたらすが、それが持続可能かどうか/筋肉量・代謝への影響/心理的ストレスなどによって差が出る。
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「このサプリ/この食品を摂れば脂肪が付かない」
→ 食品の影響は補助的であり、摂取総カロリー+消費カロリーのバランスが最も大きい。
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「○○をやれば筋肉がつく」
→ 筋トレの頻度・負荷・たんぱく質の量・休息の質・ホルモン環境が関わるので、同じトレーニングでも反応が違う。
5. 「もう惑わされない!!」“賢く情報を使う”ためのガイドライン
科学が教えてくれることを活かしつつ、情報に振り回されないための実践的アプローチを以下に示します。
ステップ1:情報源を吟味する
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投稿が「個人の体験談」か、「複数被験者を対象にした研究」かを確かめる。
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研究であれば、対象者の性別・年齢・体格条件(BMIなど)・介入内容をチェック。自分と近い条件かどうか。
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結果が「平均値/傾向」であること、効果のばらつきなどが報告されているかを見る。
ステップ2:自分で試してみる
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自分のことを知る期間(例 1〜2週間)
体重・体脂肪率・ウエスト周囲・睡眠時間・食事内容・運動量などを記録。 -
一つの方法を一定期間試す(例 4週間)
例:炭水化物を少し減らす/有酸素運動を毎週150分にする/タンパク質を体重当たり1.6g/kgにする、など。その他の条件はなるべく一定に保つ。 -
複数の観点で評価する
体重だけでなく、体組成・見た目(写真)・疲労感・睡眠・食欲・気分なども観察。 -
比較・調整
改善が見られたら続ける。見られなければ別の手法を試す。継続的な小さな改善を積むことが鍵。
ステップ3:現実的な目標設定と持続可能性
- 小さな改善でOK:体重の2~5%の減少でも生活習慣病リスク低下などの健康メリットがあるという研究が多くあります。
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生活への負荷を考える:極端すぎる食事制限・過度の有酸素運動は続きにくく、リバウンドやストレスの増加のリスクあり。
6.断定を避けるための実用的な原則
「断定を控える/個人差を前提にすべき」ことを支持する科学的・統計的概念です。
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信頼区間:平均効果の“範囲”を示す。CIが広いということは効果のばらつきが大きい証拠。
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標準偏差や予測区間:個人間の反応のばらつきを定量化する指標。たとえ平均で「痩せる」とあっても「誰でも痩せるわけではない」ということを数学的に示す。
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効果量:どれくらいの“実質的変化”があるのか(例:体重−2kg/−5kgなど)。その変化が臨床的・健康的に意味があるかどうかを考える。
「○○をしたら筋肉がつく」「○○で痩せる!」といった内容の投稿に対して、
投稿者の経験則での内容の場合、その投稿者と自身の「条件」や「環境」が当てはまるのかを考えるべき。
よく見る「私が〇kg痩せた運動方法・食事内容」のような投稿は、その投稿者の経験則であり、その投稿内容が、見た人全員の「個人最適化」ではないということを理解しなければいけない。
「〇週間で腹筋を割るトレーニング」などは、その〇週間に至るまでの体の状況によって、その内容が腹筋を割るために有効的か判断が分かれる。
すでにお腹が凹んでいる状態であれば有効的な可能性が高いものの、さらにそのトレーニングを効果的におこなうための運動スキルが必要である。
また、現状お腹が凹んでいない場合、要は肥満体型の場合は、〇週間で腹筋を割るというのは極めて困難であるということです。
結論:断定より仮説と検証がベスト
「痩せる」「筋肉がつく」と言い切る情報は、人の興味を引きやすく、動機づけになることもあります。しかし、科学的にはそれが“平均的傾向”や“ある条件下での結果”であることが多く、個人差を前提に受け取ることが重要です。
情報を鵜呑みにせず、自分の体で少しずつ試しながら結果をみて、うまく合う方法を見つけること。これが、健康的で持続可能な体づくりへの近道でしょう。
- 断定的な投稿の鵜呑みは危険
- まずは自分の情報を整理することからはじめる
- 目的、目標、それに至る原因を明確に(なぜ痩せたいのか、なぜ太っているのか、など)
- 目的目標までの計画を練り、実行と評価を繰り返す
- 単一の方法に頼るのは無計画と同じ
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