2026/10/26
「高強度だから一番効く」は本当?
最近、
「高齢者が脂肪を落としながら筋肉を守るなら、HIITが一番」
「普通のウォーキングより、きつい運動の方が筋肉を守れる」
といった話を見かけることがあります。
HIITとは、
高強度の運動と休憩をくり返す運動方法
です。
今回の結論を先に言うと、
HIITは、高齢者にとっても
有力な運動方法のひとつです。
でも、
「HIITだけが筋肉を守れる」
「高齢者なら全員HIITをやるべき」
とは言えません。
1.HIITってどんな運動?
HIITは、
短い時間しっかり強度を上げて、
そのあと少し休む、
という運動をくり返します。
たとえば、
数分間しっかり歩く・走る
↓
少し休む
↓
また強く動く
という流れです。
かんたんに言うと
「がんばる時間」と「休む時間」
を交互にくり返す運動です。
2.今回の研究では何をしたの?
今回注目された研究では、
65〜85歳の健康な男女
を対象に、
6か月間、
週3回の運動を行いました。
運動は、
-
HIIT
-
中くらいの強さの連続運動
-
バランスやストレッチ中心の運動
に分けて比較しました。
HIITでは、
トレッドミルを使って、
4分間しっかり動く × 4回
という運動を行っています。
3.HIITにはどんな結果があった?
6か月後、
HIITをしたグループでは、
中くらいの強さで運動したグループより、
除脂肪量が少し高く保たれていました。
差は、
約0.69kgでした。
これは、
HIITに良い結果があったことを示しています。
4.でも「筋肉が0.69kg多く残った」ではない
ここは大切です。
研究で測ったのは、
除脂肪量
です。
除脂肪量は、
筋肉だけではありません。
-
筋肉
-
水分
-
臓器
-
その他の脂肪以外の組織
などが含まれます。
かんたんに言うと
「脂肪じゃない部分が多く残った」ことは分かる。
でも、
その全部が筋肉だったとは言えない
ということです。
5.HIITなら筋力も一番守れる?
そこまでは分かりません。
今回の研究は、
主に体組成を見た研究です。
そのため、
HIITだけが筋力を守れる
とは言えません。
筋肉の量と、
筋力は、
同じではありません。
6.HIITは脂肪も一番落ちた?
これも、
はっきりとは言えません。
今回の研究では、
HIITと中くらいの強さの運動で、
脂肪の減り方に大きな差は
確認されませんでした。
つまり、
きつい運動だから、
必ず脂肪もたくさん減る
とは限りません。
7.じゃあHIITの何が良いの?
HIITは、
特に、
心肺体力を高める
ための方法として有力です。
心肺体力とは、
心臓や肺が、
運動中に体へ酸素を送る力のことです。
これが高まると、
-
歩く
-
階段をのぼる
-
長く動く
といったことが楽になる場合があります。
8.でも、心肺体力と筋肉は同じではない
ここも分けて考える必要があります。
HIITで、
心肺体力が良くなったとしても、
それだけで、
「筋肉を一番守れる」
ということにはなりません。
かんたんに言うと
息切れしにくくなることと、
筋肉を増やすことは別です。
9.筋肉を守りたいなら、筋トレも大切
筋肉や筋力を守るなら、
筋肉そのものに負荷をかける、
筋力トレーニング
も重要です。
たとえば、
-
スクワット
-
椅子からの立ち上がり
-
マシントレーニング
-
軽いダンベル運動
などです。
HIITだけで、
筋トレの役割まで全部代わりにできるわけではありません。
10.高齢者に必要なのは1種類の運動だけではない
高齢者の運動では、
いろいろな能力を保つことが大切です。
たとえば、
❤️ 心肺体力
💪 筋力
⚖️ バランス
🚶 歩く力
🪑 立ち上がる力
などです。
なので、
1種類の運動だけにしぼるより、
目的に合わせて組み合わせる方が自然です。
11.「HIITだけが正解」とは言えない
今回の研究では、
HIITに良い結果がありました。
でも、
筋力トレーニングと、
「どちらが筋肉を守れるか」
を直接比べた研究ではありません。
そのため、
筋肉を守るならHIITが一番
とまでは言えません。
12.別の研究ではどうだった?
別の研究では、
50歳以上の人に、
HIITと、
中くらいの強さの運動を比べました。
どちらも筋トレを一緒に行っています。
その結果、
両方のグループで、
体脂肪や除脂肪量に良い変化がありました。
でも、
HIITだけが明らかに優れていたわけではありません。
つまり、
HIITでないと効果が出ない
とは言えません。
13.高齢者なら全員HIITをやるべき?
いいえ。
今回の研究でHIITをしていたのは、
健康状態が安定していて、
強い運動に対応できる高齢者
です。
しかも、
運動は監督されていました。
なので、
その内容を、
すべての高齢者にそのまま当てはめることはできません。
14.特に注意したい人
たとえば、
-
フレイルがある
-
心臓や血管の病気がある
-
転びやすい
-
関節が強く痛む
-
運動に慣れていない
-
認知機能に問題がある
人では、
運動内容を調整する必要があります。
15.HIITは危険なの?
「高齢者だからHIITは危険」
とも言い切れません。
健康状態が安定していて、
その人に合った強度で、
段階的に行えば、
HIITが使える人もいます。
ただし、
誰でも急に強い運動を始めていい、
ということではありません。
16.一番大切なのは「何のために運動するか」
運動は、
目的で選びます。
息切れしにくくなりたい
→ HIITや有酸素運動
筋力を保ちたい
→ 筋トレ
転びにくくなりたい
→ バランス運動
歩く力を保ちたい
→ 歩行や下半身のトレーニング
というように、
目的によって必要な運動は変わります。
17.「一番きつい運動=一番いい運動」ではない
運動は、
強ければ強いほど良い、
というものではありません。
高齢者では特に、
-
安全にできるか
-
続けられるか
-
痛みが出ないか
-
体力に合っているか
-
楽しめるか
も大切です。
かんたんに言うと
続けられる運動の方が、
1回だけすごく頑張る運動より
役立つことがあります。
18.今回のHIITは、よく見る短時間HIITとは少し違う
今回の研究では、
4分間の高強度運動を4回
行いました。
これは、
SNSなどでよく見る、
-
20秒全力
-
30秒サーキット
-
短時間だけのHIIT
とは同じではありません。
「HIIT」という名前が同じでも、
内容はかなり違うことがあります。
19.グループレッスンのHIITとも同じとは限らない
ジムで行うHIIT系のレッスンでは、
-
種目
-
強度
-
休憩
-
時間
-
筋トレ要素
が違います。
そのため、
今回の研究結果を、
すべてのHIITレッスンに
そのまま当てはめることはできません。
20.実際にはどう考えればいい?
高齢者の運動では、
「HIITをやるか、やらないか」
だけで考えるより、
その人の目的に合った運動を組み合わせる
ことが大切です。
たとえば、
-
有酸素運動
-
筋トレ
-
バランス運動
-
日常の歩行
などです。
21.今回の研究で分かっていること
「健康な高齢者の研究で、HIITに除脂肪量維持の利点があった」
→ 概ね支持されています。
「HIITだけが筋肉や筋力を守れる」
→ 言いすぎです。
「HIITなら中強度運動より必ず脂肪が多く落ちる」
→ 根拠は弱いです。
「高齢者は全員HIITをやるべき」
→ 根拠は弱いです。
22.まだ分かっていないこと
これからもっと研究が必要なのは、
-
実際の骨格筋がどれくらい守られるか
-
筋力への長期的な効果
-
フレイルの人ではどうか
-
どんなHIITが一番よいか
-
筋トレと一緒にしたときの効果
-
何年も続けた場合どうなるか
などです。
23.今回の結論
HIITは、
高齢者にも使える、
有力な運動方法のひとつ
です。
特に、
心肺体力を高める目的では、
よい選択肢になり得ます。
でも、
筋肉を守るならHIITだけ
高齢者ならHIITが一番
というのは、
少し言いすぎです。
結論まとめ
「健康な高齢者の研究で、HIITに除脂肪量維持の利点があった」
→ 基本的には支持されるが、条件や例外がある
「HIITだけが筋肉・筋力を守れる」
→ 誤解を招きやすい
「HIITなら必ず脂肪も多く減る」
→ 根拠は弱い
「高齢者なら全員HIITをやるべき」
→ 根拠は弱い
最後に一言でまとめるなら、
「高強度だから一番」ではありません。
そして、
心肺体力・筋力・バランス・安全性。
目的に合わせて運動を組み合わせることが大切です。
これが、今回の研究をいちばん分かりやすく、誤解なく伝える考え方です。
