2026/10/20
オリーブオイル・米油・サラダ油・ラードを科学的に比較する
「サラダ油をオリーブオイルに変えると痩せる」
「米油の方が太りにくい」
「ラードにすると脂肪がつきにくい」
最近は、こんな情報を見かけることがあります。
でも、最初に結論を言うと、
油を変えるだけで、大きく痩せるとは言えません。
ただし、
油の種類はまったく関係ない
というわけでもありません。
今回のポイントは、
「痩せるか」
と
「健康に良いか」
を分けて考えること
です。
1.まず、「油を変える」と「油を足す」は違う
たとえば、
サラダ油10gを
オリーブオイル10gに変える。
これは、
油の種類を変えた
という話です。
一方で、
普段の食事に
オリーブオイルを10g追加する。
これは、
食べる量そのものが増えた
という話です。
ここを一緒にすると、
「オリーブオイルだから痩せた」
のか、
「食べる量が減ったから痩せた」
のか分からなくなります。
かんたんに言うと
油を替えるのと、
油を足すのは別です。
2.油は種類が変わっても、急に低カロリーにはならない
多くの調理油は、
1gあたり約9kcal
あります。
つまり、
サラダ油10gを
オリーブオイル10gに変えても、
カロリーが大きく下がるわけではありません。
だから、
「健康に良い油だから、たくさん使っても太らない」
という考え方は正確ではありません。
かんたんに言うと
良い油でも、
量を気にしなくて
いいわけではありません。
3.「サラダ油」は一種類ではない
ここも大事です。
「サラダ油」という名前だけでは、
何の油か分からないことがあります。
実際には、
- 菜種油
- 大豆油
- コーン油
- 米油
- ひまわり油
- ごま油
- 調合油
などがあります。
なので、
「サラダ油より○○油が良い」
という話を見るときは、
サラダ油の原料が何なのかまで確認しないと、
本当の比較にはなりません。
4.オリーブオイルに変えると痩せる?
研究では、
オリーブオイルの方が
体脂肪が減った試験もあります。
たとえば、体脂肪が多い若い女性を
対象にした短期研究では、
減量食を行いながら、
- 大豆油
- エクストラバージンオリーブオイル
を比べたところ、
オリーブオイル側で脂肪量が
より減った結果が出ています。
ただし、
この研究は、
- 人数が少ない
- 若い女性のみ
- 短期間
- もともと減量食をしている
という条件があります。
つまり、
普段の食事にオリーブオイルを足せば痩せる
という研究ではありません。
5.オリーブオイルで差が出なかった研究もある
別の研究では、
高フェノールのエクストラバージンオリーブオイルと、
通常のオリーブオイルを比べました。
ウエストに差は出ましたが、
- 体重
- 体脂肪量
- 筋肉量
- 内臓脂肪
には明確な差が出ませんでした。
長期の研究でも、
オリーブオイルを多く使う食事で、
大きな体重差が出なかったものがあります。
つまり、
オリーブオイルは必ず痩せる
とも、
まったく意味がない
とも言えません。
今回の評価は、
研究結果が一致していない
です。
6.では、ラードなら太りにくい?
最近よく話題になるのが、
「ラードの方が太りにくい」
という話です。
ただし、ここはかなり注意が必要です。
話題になった研究の中心は、
人ではなくマウス
でした。
しかも、
ラードと比べていたのは、
植物油ではなく牛脂
です。
さらに、マウスは好きなだけ食べる条件で、
実際に食べた量も違っていました。
そのため、
「同じカロリーならラードの方が太らない」
とまでは言えません。
7.人でラードを比べた研究では?
人を対象に、
- ラード
- 大豆油
- ラードと大豆油の混合
を比べた12週間の研究があります。
その結果、
ラードの方が体重が減る
という明確な差は出ませんでした。
だから現在のところ、
ラードに変えれば植物油より太りにくい
という主張を支える研究は、
研究量または研究の質が不足しています。
かんたんに言うと
ラードには料理としての良さはあります。
でも、
「痩せるためにラードへ変える」
根拠はまだ弱い
ということです。
8.同じ体重でも、体の中の変化は違うことがある
ここは少し重要です。
油の違いは、
体重だけでは見えない場合があります。
ある研究では、
飽和脂肪酸が多い食事と、
多価不飽和脂肪酸が多い食事で、
体重の増え方は大きく変わりませんでした。
でも、
肝臓にたまる脂肪
には違いが出ました。
つまり、
体重が同じなら体の中も同じ
とは限りません。
ただし、これは食べ過ぎさせる研究です。
普段の家庭での少量の油交換と同じではありません。
9.米油は痩せる?
米油については、
体脂肪を減らす効果は
まだはっきりしていません。
一方で、
LDLコレステロールを下げる方向
の研究はあります。
複数の研究をまとめた解析では、
米油でLDLが平均的に下がる結果が出ています。
ただし、
LDLが下がった=痩せた
ではありません。
かんたんに言うと
米油は、
「痩せる油」としてより、
血中脂質の面で注目できる油
です。
10.健康なら、オリーブオイルが一番?
これも一言では決められません。
オリーブオイルには、
一価不飽和脂肪酸が多く、
エクストラバージンオリーブオイルには、
フェノール類なども含まれています。
健康面で有利な結果もあります。
ただし、
オリーブオイルがすべての油より必ず優れている
という意味ではありません。
たとえばLDLについては、
菜種油や大豆油などの不飽和脂肪の多い油も有利です。
11.「痩せなくても、油を変える意味」はある
ここが今回の大事なところです。
体重が変わらなくても、
LDLコレステロールが改善する
なら、その油の変更には意味があります。
研究全体では、
飽和脂肪酸の多い脂肪から、
不飽和脂肪酸の多い油へ変えると、
LDLが下がる方向はかなり一貫しています。
今回この点は、
かなり一貫して支持されている
と評価しました。
12.だからといって「ラードは悪い」でもない
ラードには、
飽和脂肪酸だけでなく、
一価不飽和脂肪酸なども含まれています。
「ラード=飽和脂肪100%」
ではありません。
また、
少量使うことと、
家庭のメイン油として
大量に使うことも違います。
ラードは、
風味や料理の仕上がりを目的に使う
という選択肢はあります。
ただし、
減量効果を理由に主油へ変える
という根拠はまだ十分ではありません。
13.「植物油は炎症を起こす」は本当?
SNSでは、
「大豆油」
「オメガ6」
「リノール酸」
は炎症を起こす、
という説明を見かけます。
でも、人を対象にした複数の研究をまとめると、
通常のリノール酸摂取で
炎症マーカーが一貫して上がる
という結果にはなっていません。
今回の評価は、
一部事実を含むが誤解を招きやすい
です。
研究全体については、
概ね支持されているが、不確実性が残る
としました。
つまり、
「オメガ6を食べれば炎症が起きる」
とは言えません。
14.でも植物油は酸化しやすいのでは?
多価不飽和脂肪酸は、
化学的には酸化しやすい
特徴があります。
でも、
酸化しやすい
と
普通に食べたら健康に悪い
は同じではありません。
さらに、
- 新しい油
- 長時間加熱した油
- 何度も使った揚げ油
も同じではありません。
ここを一緒にしないことが大切です。
15.オリーブオイルは加熱しちゃダメ?
これは違います。
普通の家庭料理で、
オリーブオイルを加熱してはいけない、
という根拠はありません。
加熱によって、
香りや一部の成分が減ることはあります。
でも、
加熱した瞬間に健康に悪い油になる
わけではありません。
かんたんに言うと
オリーブオイルは、
普通の炒め物にも使えます。
16.煙点が高い油ほど健康?
これも単純ではありません。
煙点は、
油の特徴を見る一つの数字です。
でも、
煙点だけでは、
- 酸化しやすさ
- 劣化物
- 抗酸化成分
- 長期の健康への影響
までは分かりません。
そのため、
煙点が高い=一番健康
とは言えません。
17.米油は高温調理で最強?
米油は、
クセが少なく、
高温調理にも使いやすい油です。
これは家庭で選ぶ理由になります。
ただし、
人の健康まで含めて「最も健康的」
という順位はまだ決められません。
今回の評価は、
現時点では確定できない
です。
18.良い油なら揚げ物も健康?
油を良いものに変えても、
揚げ物には、
- 吸う油の量
- 食材
- 衣
- 食べる量
- 食べる頻度
- 揚げ油の劣化
などが関係します。
だから、
油を変えれば揚げ物が健康食品になる
わけではありません。
19.オイルファーストで痩せる?
油を先に取ると、
食後血糖や胃の動き、
GLP-1などが変わる研究があります。
ただし、
それは、
食後数時間の反応
です。
その研究で、
数か月後の体脂肪が減ったかどうかは確認されていません。
今回、
オイルファーストによる長期の脂肪減少
については、
現時点では確定できない
と評価しました。
20.「血糖が上がりにくい=痩せる」ではない
血糖値が上がりにくくなっても、
それだけで体脂肪が減るとは限りません。
体脂肪が減るためには、
長い目で見た、
食べる量と使うエネルギーのバランス
も関係します。
また、
「脂肪を燃やした」
という短時間の変化も、
そのまま長期の脂肪減少を意味しません。
21.MCTオイルなら痩せる?
MCTには、
普通の長鎖脂肪より、
少し体重管理に有利な結果が出た研究があります。
ただし、
平均的な差は小さめです。
さらに多くの研究は、
普段の油をMCTに置き換える
形です。
普段の食事にMCTを追加すれば、
その分さらに痩せる、
という意味ではありません。
22.結局、家庭ではどの油を選べばいい?
一つに決めなくて大丈夫です。
目的ごとに考えると分かりやすくなります。
減量を優先するなら
まず見るのは、
油の種類より、
使う量と食事全体。
良い油でも、
たくさん使えばエネルギーは増えます。
LDLコレステロールを意識するなら
飽和脂肪酸が多い脂肪を、
不飽和脂肪酸が多い油へ変えることには意味があります。
たとえば、
- オリーブ油
- 菜種油
- 大豆油
などです。
米油を使うなら
- 味がクセになりにくい
- 加熱調理に使いやすい
- LDL改善の研究がある
といった点が選ぶ理由になります。
オリーブオイルを使うなら
- 風味
- エクストラバージンに含まれる成分
- 地中海食との相性
などが良い点です。
ただし、
たくさん使えば痩せる油ではありません。
ラードを使うなら
- 風味
- 香ばしさ
- 料理の仕上がり
を理由に使うのは問題ありません。
ただし、
「太りにくいから使う」
という根拠はまだ弱いです。
23.今回の結論
今回のEvidenceをまとめると、
「痩せる油ランキング」
を作れるほど、
研究結果はそろっていません。
オリーブオイルで有利な研究もあります。
でも差が出なかった研究もあります。
米油は、
減量よりLDLの方が研究上は期待できます。
ラードは、
人で「太りにくい」と言えるほどの研究はまだ足りません。
一方で、
飽和脂肪酸が多い脂肪から、
不飽和脂肪酸が多い油へ変えることで、
LDLコレステロールを下げる方向は、
かなり一貫して支持されています。
結論まとめ
「サラダ油をオリーブ油に変えるだけで痩せる」
→ 一部事実を含むが誤解を招きやすい
研究結果は一致していません。
「米油にすると太りにくい」
→ 主張を支える根拠が弱い
研究量または研究の質が不足しています。
「ラードなら植物油より太りにくい」
→ 主張を支える根拠が弱い
研究量または研究の質が不足しています。
「オメガ6は炎症を起こす」
→ 一部事実を含むが誤解を招きやすい
通常の摂取で一律に炎症が増えるとは言いにくいです。
「オリーブ油は加熱してはいけない」
→ 現在の根拠と明確に矛盾します
「良い油なら量を気にしなくてよい」
→ 一部事実を含むが誤解を招きやすい
最後に一言でまとめるなら、
痩せるために油を変えるなら、
まず「種類」より「量」を見る。
でも健康を考えるなら、
「何から何へ変えるか」も大切。
そして、
オリーブ油、米油、菜種油、ラードの中から、
ひとつの「正解の油」を決める必要はありません。
目的、量、料理、続けやすさ。
この4つを合わせて選ぶのが、いちばん現実的です。
