• TEL 078-871-0566

    〒657-0836 兵庫県神戸市灘区城内通4-4-5
    グランディア王子駅前102

第3部|授乳中は減量していい?

「母乳のためにたくさん食べる」と「産後ダイエット」の間をどう考える?

授乳中は、

「痩せようとすると母乳が止まる」

「授乳していれば自然に痩せる」

「母乳のために+500kcal食べるべき」

といった話をよく見かけます。

でも、Evidenceを整理すると、

どれもそのまま全員に当てはまるわけではありません。

結論からいうと、

授乳中の減量は、

一律に禁止されているわけではありません。

ただし、

母体の回復・栄養状態・授乳状況・乳児の成長を

無視して減量してよいわけでもありません。

健康で栄養状態が良く、過体重で、正期産児を

授乳している女性を対象とした

小規模RCTでは、緩やかな減量を行っても

乳児成長に明確な悪影響は確認されませんでした。

一方で、出産直後、低体重、低栄養、貧血、

乳汁分泌の問題などまで安全性が

確認されたわけではありません。

 



1.授乳すれば自然に痩せる?

これは正しくもありますが、注意も必要です。

授乳にはエネルギーが必要です。

つまり、授乳によってエネルギー消費が

増えるという生理的な仕組みはあります。

でも、

「だから授乳すれば必ず痩せる」

とは言えません。

実際の体重変化には、

  • 食欲
  • 食事量
  • 睡眠
  • 活動量
  • 妊娠中の体重増加
  • 授乳頻度
  • 完全母乳か混合か
  • 個人差

などが影響します。

今回の判定は、

一部事実を含むが誤解を招きやすいです。

Evidence Statusは、

研究結果が一致していないと言えます。

 



かんたんに言うと

母乳を作るにはエネルギーを使います。

でも、

「授乳=自動的に痩せる」ではありません。

 



2.授乳中は毎日+500kcal食べる必要がある?

これもよく聞きます。

しかし、

「授乳中なら全員+500kcal」

という固定ルールではありません。

日本の2025年版食事摂取基準では、

授乳婦の付加エネルギーは

+350 kcal/日

が目安です。

一方、CDCでは

+330〜400 kcal/日

が示されています。

国や算定方法によって違いがあります。

さらに、

  • 完全母乳
  • 混合栄養
  • 授乳回数が減っている
  • 離乳が進んでいる

では必要量も同じとは限りません。

今回の判定は、

一部事実を含むが誤解を招きやすいと言えます。

Evidence Statusは、

概ね支持されているが、不確実性が残ります。

 



かんたんに言うと

授乳中はエネルギーが追加で必要ですが、

「全員500kcal追加」ではありません。

 



3.授乳中は減量してはいけない?

今回の重要ポイントです。

「授乳中は減量してはいけない」

という主張は、

現在の根拠と明確に矛盾します。

Evidence Statusは、

概ね支持されているが、不確実性が残ります。

 

健康な過体重の完全母乳女性を対象にした

研究では、緩やかな減量が実際に行われています。

つまり、

授乳中だから減量そのものが禁止

というわけではありません。

ただし、ここで重要なのは、

研究対象が限定されている

ということです。

 



4.実際の研究ではどのくらい痩せていた?

代表的なのがLoveladyらのRCTです。

対象は、

  • 産後4週
  • BMI 25〜30
  • 健康
  • 完全母乳
  • 正期産児
  • 帝王切開例を除外

など、かなり条件が限定された女性でした。

食事を約500kcal/日減らし、

有酸素運動を週4回行う介入を10週間実施。

結果は、

  • 介入群:約4.8kg減
  • 対照群:約0.8kg減

でした。

乳児の体重・身長の増加には

有意差がありませんでした。

ただし、この研究は、

「誰でも−500kcalなら安全」

を証明した研究ではありません。 

 



かんたんに言うと

一部の健康な授乳中女性では、

ゆるやかに減量できた研究があります。

でも、その数字をそのまま全員に使うことはできません。

 



5.じゃあ−500kcalなら安全?

ここは非常に重要です。

答えは「分かっていません」。

−250、−300、−500kcalなどを

大人数で直接比較して、

どれが最適か
どこまでが安全上限か

を決めた研究は確認されていません。

また、代表研究の「500kcal減」は、

食事調整量の話であって、

実際の総エネルギー赤字が毎日正確に500kcalだった

という意味でもありません。

「授乳中は−500kcalまでOK」

というルール化はできません。

 



6.食事を減らすと母乳が止まる?

これも極端な表現です。

今回の判定は、

一部事実を含むが誤解を招きやすいと言えます。

Evidence Statusは、

研究量または研究の質が不足しています。

特定の研究では、適度な制限を行っても

母乳量や乳児成長に明確な差が出なかった結果があります。

しかし、

「どんな赤字でも母乳量は変わらない」

という意味ではありません。

Cochraneレビューでは、

食事+運動群と通常生活群の母乳量差は、

−33g/日

でしたが、95%信頼区間は

−81.25〜+15.25g/日

でした。

つまり有意差はなくても、

ある程度の減少の可能性まで完全に

除外されたわけではありません。 

 



かんたんに言うと

少し食事を調整したら、

すぐ母乳が止まるとは言えません。

でも、

「いくら減らしても平気」

でもありません。

 



7.「有意差がなかった」=絶対に安全?

違います。

これはEvidenceを見るうえで非常に大切です。

研究で、

「母乳量に有意差がなかった」

としても、

それは、

「完全に影響ゼロと証明された」

という意味ではありません。

研究人数が少なければ、

ある程度の差を見逃すこともあります。

さらに、

短期的に問題がなくても、

長期の母体栄養や乳児発達まで同じとは限りません。

 



8.急激に痩せると母乳の“質”が悪くなる?

この「母乳の質」という言葉にも注意が必要です。

母乳には、

  • 脂肪
  • 脂肪酸
  • DHA・EPA
  • タンパク質
  • 乳糖
  • ビタミン
  • ミネラル

など、さまざまな成分があります。

母体の食事による影響は、

成分ごとに違います。

たとえば脂肪酸や一部の

ビタミン・ヨウ素などは食事の影響を受けやすい一方、

タンパク質や乳糖などは単純に食事量と

比例するわけではありません。 

そのため、

「痩せると母乳の質が悪くなる」

という一文だけでは科学的には曖昧です。

今回の判定は、

単純な正誤判定ができないと言えます。

Evidence Statusは、

研究量または研究の質が不足しています。

 



9.母乳のために脂質をたくさん食べた方がいい?

脂質の摂取と母乳の脂肪成分には関係があります。

特に脂肪酸組成は母体の食事の

影響を受けることがあります。

ただし、

「脂質を食べれば食べるほど母乳の脂肪が増えて良くなる」

とは言えません。

総脂肪量には、

  • 採乳した時間
  • 授乳の前半・後半
  • 母体の食事
  • 個人差

なども関係します。

今回の判定は、

単純な正誤判定ができません。

Evidence Statusは、

研究量または研究の質が不足しています。

 



10.授乳中はタンパク質を多く取るほどいい?

日本の2025年版では、

授乳期のタンパク質は通常の推奨量に対して、

+20g/日

の付加推奨量があります。

ただし、

「多ければ多いほどよい」

という意味ではありません。

必要量を満たすことと、

高タンパク食へ極端に寄せることは別です。 

今回の判定は、

主張を支える根拠が弱いです。

Evidence Statusは、

研究量または研究の質が不足しています。

 



11.授乳中は糖質を減らしても大丈夫?

これも程度によります。

普通の食事で、

  • お菓子
  • 甘い飲料
  • 過剰な精製食品

を減らすことと、

極端な低糖質食

は同じではありません。

授乳中の短期研究では、炭水化物と脂質の割合を

変えても母乳量が大きく低下しなかった結果があります。

しかし、それは、

ケトジェニックダイエットの長期安全性

を証明した研究ではありません。

今回の判定は、

一部事実を含むが誤解を招きやすいです。

Evidence Statusは、

研究量または研究の質が不足しています。

 



12.授乳中のケトジェニックダイエットは?

授乳中のケトジェニックダイエットについては、

安全性が確立しているとは言えません。

今回の判定は、

主張を支える根拠が弱く、

Evidence Statusは、

研究量または研究の質が不足しています。

さらに、授乳中には非常にまれですが、

授乳期ケトアシドーシス

の症例報告があります。

2020年のレビューでは18例がまとめられています。

ただし、症例報告なので、

「何g以下の糖質なら危険」

「何%の人に起きる」

といったことは分かりません。 

つまり、

通常の糖質調整と極端なケト食は分けて考える

必要があります。

 



13.授乳中の16時間断食は?

これも、

「問題ない」とは言えません。

短時間の宗教的断食や24時間前後の研究はありますが、

それをそのまま、

毎日16時間断食を長期間続ける減量法

の安全性に置き換えることはできません。

特に、

  • 低エネルギー
  • 低糖質
  • 脱水
  • 睡眠不足
  • 高い活動量

などが重なる場合は別です。

今回のEvidenceでは、

授乳期ケト食・反復断食の総合的安全性

は、

現時点では確定できません。

 



14.水をたくさん飲めば母乳が増える?

脱水を防ぐことは大切です。

でも、

水を必要以上に飲めば母乳量が増える

という強い証拠はありません。

今回の判定は、

主張を支える根拠が弱く、

Evidence Statusは、

研究量または研究の質が不足しています。

「授乳中だから毎日水だけで3L以上」

といった一律ルールも支持されていません。 

 



かんたんに言うと

水分不足は避ける。

でも、

たくさん飲めば飲むほど母乳が

増えるわけではありません。

 



15.餅やスープを食べると母乳が増える?

よくある話です。

餅やスープは、

  • エネルギー
  • 炭水化物
  • 水分

を取る食品としては役立ちます。

ただし、

その食品だけに特別な増乳作用がある

という十分なEvidenceは確認されていません。

今回の判定は、

主張を支える根拠が弱く、

Evidence Statusは、

研究量または研究の質が不足しています。

母乳量が気になる場合は、

「何を食べれば増えるか」

だけではなく、

  • 授乳・搾乳の状態
  • 乳汁移行
  • 母体の健康
  • 乳児の成長

なども一緒に確認します。

 



16.授乳中はカルシウムを大量に取らないと骨が弱くなる?

授乳中は、母体の骨からカルシウムが

一時的に動員され、骨密度が低下することがあります。

ただし、多くでは離乳後などに回復します。

そして、

カルシウムを大量に追加すれば、その変化を確実に防げる

というEvidenceも強くありません。

カルシウム補給RCTのメタ解析では、

腰椎骨密度の差は明確ではありませんでした。 

必要量を満たすことは大切ですが、

「授乳中だから大量摂取」ではありません。

 



17.母乳が出ていれば母親の栄養状態も大丈夫?

これは違います。

母乳が作られていることと、

母体に必要な栄養がすべて十分

ということは同じではありません。

特に、

  • 鉄
  • B12
  • ヨウ素
  • ビタミンD
  • DHA/EPA
  • タンパク質

などは、食事内容や個人条件を確認する意味があります。

一方で、母乳中の鉄やカルシウム濃度だけを見て、

母体の栄養状態を判断することもできません。 

 



18.じゃあ授乳中の減量はどう進める?

最も重要なのは、

減量だけを単独で考えないこと

です。

まず、

  • 産後の回復は進んでいるか
  • 食事が取れているか
  • 出血・貧血などはないか
  • 授乳は安定しているか
  • 乳児の成長に問題はないか
  • 睡眠や疲労はどうか
  • 低体重・低体脂肪ではないか

を確認します。

そのうえで、

健康状態・栄養状態・乳児成長が良好で、

減量の必要性や希望がある場合

には、

緩やかな長期管理

を検討できます。 

 



19.体重だけを目標にしない

授乳中の減量では、

体重だけでなく、

  • 食事量
  • 体脂肪
  • 筋力
  • 疲労
  • 睡眠
  • 授乳状況
  • 乳児成長
  • 日常生活
  • 継続可能性

を一緒に見ます。

特に、

「母乳が出ているからもっと減らせる」

「体重が落ちないからもっと食事を削る」

という判断は避けます。

 



20.今回の結論

授乳中は、

減量してはいけない時期

ではありません。

でも、

普通のダイエットと

同じ感覚で食事を削ってよい時期

でもありません。

今回のEvidenceから最も適切にまとめるなら、

授乳中の減量は、母体の回復・栄養・授乳・

乳児の成長を確認しながら、必要なら緩やかに行う。

です。

そして、

「授乳中だから減量禁止」でも、
「母乳が出ているから好きに減らしていい」でもない。

この中間を考えることが大切です。

 



結論まとめ

「授乳すれば自然に痩せる」

→ 一部事実を含むが誤解を招きやすい
Evidence Status:研究結果が一致していない

「授乳中は毎日+500kcal必要」

→ 一部事実を含むが誤解を招きやすい
Evidence Status:概ね支持されているが、不確実性が残る

「授乳中は減量してはいけない」

→ 現在の根拠と明確に矛盾する
Evidence Status:概ね支持されているが、不確実性が残る

「食事を減らすと母乳が出なくなる」

→ 一部事実を含むが誤解を招きやすい
Evidence Status:研究量または研究の質が不足している

「エネルギー赤字を作っても母乳量は変わらない」

→ 一部事実を含むが誤解を招きやすい
Evidence Status:研究量または研究の質が不足している

「水を大量に飲めば母乳量が増える」

→ 主張を支える根拠が弱い
Evidence Status:研究量または研究の質が不足している

「授乳中のケトジェニックダイエットは安全」

→ 主張を支える根拠が弱い
Evidence Status:研究量または研究の質が不足している